潜水士「送気・潜降・浮上」の出題ポイント解説
潜水士試験の送気・潜降・浮上は、潜水作業の安全を左右する核心分野です。減圧表の読み方、浮上速度、減圧停止、窒素分圧計算など、命に関わる知識が問われます。全40問中10問出題され、計算問題も含まれる山場。本記事で体系的に整理します。
この章の重要度
この章は減圧症予防という潜水士の実務の根幹に関わるため、試験でも重視されます。減圧表の読み取り問題は毎回出題され、浮上速度・停止時間の数値は頻出。40問中10問で足切り4問ですが、合格者は8問以上取ることが多い戦略分野です。
頻出トピック一覧
1. 潜降・浮上の速度基準
潜降は毎分10m以下、浮上は毎分10m以下(厳密には告示基準)が原則。急降下は耳抜き困難・スクイーズ、急浮上は減圧症・空気塞栓症の原因。浮上中は呼吸を止めない(肺破裂防止)が鉄則です。
2. 減圧表(厚生労働省告示)の構造
最大水深(実際の最大到達深度)と潜水時間(潜降開始から浮上開始まで)から、必要な減圧停止深度・各深度での停止時間を読む。表の選択ルールを誤ると致命的事故につながる頻出論点。
3. 減圧停止の実施
深い停止深度から順に停止し、規定時間経過後に次の浅い深度へ毎分10m以下で移動。停止深度は通常3m間隔(3m・6m・9m・12m…)で設定。停止中は送気を確実に受ける姿勢を維持します。
4. 窒素分圧とヘンリーの法則
空気中の窒素分圧は約0.78気圧×絶対圧。水深30m(絶対圧4気圧)では窒素分圧=0.78×4≒3.12気圧。ヘンリーの法則により溶解量は分圧に比例し、組織飽和が進行します。
5. 反復潜水と残留窒素
一度の潜水後、体内窒素は完全排出されないまま次の潜水に入ると危険。水上休息時間(12時間以上で残留窒素ほぼ消失)、反復潜水指示グループ・時間補正表の使い方が頻出。
6. 空気塞栓症の発生機序
浮上中に息を止めると、肺胞内空気が膨張して肺破裂、血管内に気泡が入り脳塞栓を引き起こす。発症は浮上直後〜数分以内で意識喪失・麻痺・死亡につながる最緊急事態です。
7. 再圧室(再圧治療装置)の使用
減圧症・空気塞栓症発症時に加圧室内で再び高圧→ゆっくり減圧して気泡を溶解・排出。症状出現から早期の再圧治療が予後を決定。現場から再圧室への迅速搬送計画が必須です。
8. 送気中の緊急事態対応
送気停止・ホース切断・器材故障時の対応。予備送気源(予備空気槽・バックアップスクーバ)への切替、信号索による異常連絡、緊急浮上判断の基準が頻出です。
覚え方のコツ
この章は「浮上速度10m/分・停止深度3m間隔」という基本数値と、減圧表の読み取り手順を体に叩き込むのが最優先です。減圧表の問題は「最大水深○m、潜水時間○分のときの減圧停止」という形で出題されるので、表の検索手順を機械的に反復練習。窒素分圧計算は「絶対圧×0.78」の一行公式で対応できるので、水深→絶対圧→窒素分圧の3ステップで計算。反復潜水の水上休息時間「12時間で残留窒素ほぼ消失」「休息時間2時間以内なら反復潜水扱い」などキー数値はゴロ暗記。空気塞栓症と減圧症は原因・発症時期・症状が別物なので、表で対比させて整理すると混乱しません。
よくあるひっかけ
この章で頻出のひっかけ。①浮上速度:毎分10m以下が正しく、「毎分18m」は米海軍旧基準で現行日本基準ではない。②減圧停止中の送気:停止中も送気継続が必須で、送気停止してはいけない。③潜水時間の定義:潜降開始から浮上開始までで、浮上中は含まない。④窒素分圧:水深10mで2気圧×0.78=1.56気圧(水面0.78気圧の2倍)であり、「水深10mで1気圧」は誤り。⑤呼吸停止浮上:息を止めて浮上すると肺破裂、絶対にしてはいけない。⑥空気塞栓症と減圧症:塞栓症は浮上中の息止めが原因、減圧症は窒素の気泡化が原因で機序が異なる。⑦再圧治療:発症から可能な限り早期に実施、数日経ってからでは効果減少。⑧反復潜水の水上休息:12時間以上あけるのが安全で、短時間休息では残留窒素が蓄積。
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