電験一種を活かせる職場と年収【発電所・大規模工場・電気保安法人】
公開: 更新:
第一種電気主任技術者(電験一種)は電圧無制限で全ての事業用電気工作物の保安監督ができる最上位国家資格。年間受験者約1,500人・合格率30〜33%(一次)の最難関で、保有者は大手電力会社・大規模発電所・超大規模工場で引っ張りだこです。本記事では電験一種を活かせる職種・国の統計で見る給与・キャリアパス・独立開業の現実をまとめました。
※受験料・試験日程・合格基準等は改定される場合があります。最新情報は必ず電気技術者試験センターの公式情報でご確認ください。
電験一種を活かせる主な職種
1. 大手電力会社・発電所の主任技術者
火力・水力・原子力・大規模再エネ発電所では超高圧(27.5万V・50万V級)で送電する基幹設備が多く、電験一種保有者でないと選任できません。電力10社の発電部門・送配電部門は安定志向で福利厚生・退職金も手厚い傾向があります。中途採用市場でも電験一種は最強の武器です。
2. 大手送配電事業者・基幹変電所
2020年の発送電分離後、送配電は各エリアごとに送配電事業者(一般送配電事業者)が担います。50万V・27.5万Vの基幹系統運用には電験一種が必須です。系統運用センター・給電所のオペレーション業務もキャリアパスです。
3. 超大規模工場・コンビナートの電気主任技術者
製鉄所・化学コンビナート・自動車組立工場の特高受電(15.4万V級)案件は電験一種保有者でないと安心して任せられないケースが多く、チーフエンジニアとして中核を担います。自家発電・コージェネ・系統連系の専門知識が活きるポジションです。
4. 電気保安法人・電気管理技術者(独立)
電気保安協会などの保安法人で特別高圧の事業場を担当する道と、独立して電気管理技術者になる道があります。ただし、電気管理技術者として保安管理業務を受託できるのは電圧7,000V以下で受電する需要設備などに限られ、この点は電験三種で独立する場合と変わりません(免状の種類で変わるのは必要な実務経験の年数です)。
5. 電気コンサルティング・設計事務所
大規模受変電設備・電力系統・スマートグリッドの設計コンサルでも活躍できます。再エネ大量導入・系統連系・需給調整市場関連のプロジェクト需要が拡大しており、一種保有のシニアエンジニアは独立コンサルとしても活躍可能です。
主任技術者として配置できる範囲
| 資格 | 選任できる事業用電気工作物の電圧範囲 |
|---|---|
| 電験一種 | すべての事業用電気工作物(電圧無制限) |
| 電験二種 | 17万V未満の事業用電気工作物 |
| 電験三種 | 5万V未満の事業用電気工作物(出力5,000kW未満) |
電験一種は50万V級の基幹送電系統・大型発電所・コンビナートまで全てカバーできる唯一の資格範囲。電験二種ではカバーできない超大型案件で替えの利かない存在となります。
国の統計で見る給与
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和7年)の職種別の値です。 電気主任技術者は、統計では「電気・電子・電気通信技術者」に数えられます。電気機器の設計・製造の技術者なども同じ職種に入るため、保安業務だけの平均ではありません。
電気・電子・電気通信技術者(通信ネットワーク技術者を除く)
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 推定年収(※) | 704万円 |
| 毎月の給与(きまって支給する現金給与額) | 448,600円 |
| 年間賞与その他特別給与額 | 1,656,200円 |
| 平均年齢/平均勤続年数 | 42.1歳/15.1年 |
勤め先の規模で差があります(推定年収)。
| 企業規模 | 推定年収 |
|---|---|
| 1,000人以上 | 750万円 |
| 100〜999人 | 676万円 |
| 10〜99人 | 598万円 |
経験年数による違い(所定内給与額×12+年間賞与で計算。残業代は含みません)。
| 経験年数 | 年収の目安 |
|---|---|
| 0年 | 378万円 |
| 1〜4年 | 506万円 |
| 5〜9年 | 591万円 |
| 10〜14年 | 670万円 |
| 15年以上 | 770万円 |
※推定年収=毎月の給与(6月分・残業代などを含む)×12+前年1年間の賞与。当サイトで計算した値で、厚生労働省の公表値そのものではありません。 対象は一般労働者(短時間労働者を除く)・企業規模10人以上の事業所です。その職種で働く人全体の値で、この資格を持っている人だけの平均ではありません。 出典:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和7年 (e-Stat 職種別の表)
電験の種別(一種・二種・三種)で分けた公的な統計はありません。担当できる設備の範囲は上の表のとおり違い、より大きな設備を扱える一種は、勤務先の選択肢と交渉できる条件の幅が広がります。
資格手当
資格手当の有無や金額は会社ごとに決まり、資格ごとの公的な統計はありません。国の調査では、技能手当・技術(資格)手当を出している企業は全体の48.5%、 支給された人の平均は月21,500円でした(令和6年11月分)。この資格が手当の対象になるか、いくらかは、応募先の求人票や就業規則で確かめてください。
| 企業規模 | 手当がある企業の割合(※) | 支給された人の平均(月額) |
|---|---|---|
| 1,000人以上 | 53.1% | 20,900円 |
| 300〜999人 | 57.5% | 19,100円 |
| 100〜299人 | 56.9% | 20,500円 |
| 30〜99人 | 51.3% | 25,000円 |
※何らかの手当を出している企業のうち、技能手当・技術(資格)手当を出している企業の割合。「技能手当・技術(資格)手当」は特定の技能、検査資格などを有する者に対して支給する賃金(調査の定義)。対象は常用労働者30人以上の民営企業。 出典:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」(概況 第17表(支給企業割合)・第18表(支給された労働者1人平均支給額))
電気主任技術者に選任された人に「選任者手当」を別に出す会社もあります。金額は会社ごとに違うため、求人票や就業規則で確かめてください。
二次試験合格までの道のり
電験一種は一次(マーク式4科目)→二次(記述式2科目:電力・管理/機械・制御)の2段階構成。一次の科目合格は3年間有効で、二次は一次合格年含む2年以内に合格する必要があります。
- 一次対策:理論・電力・機械・法規の4科目を1〜2年で攻略(電験二種合格者なら追加500〜800時間)
- 二次対策:記述・論述・計算の高度問題。電力・管理/機械・制御の2科目を1年集中で対策
- 最終合格:一次+二次同年合格は数百人/年の超難関。多くは2〜3年計画で挑戦
二次試験は記述・論述採点があり独学では難度が高いため、通信講座・予備校の活用が現実的です。詳細は電験一種の通信講座比較をご参照ください。
独立開業(電気管理技術者)
電気主任技術者の免状を受け、告示で定める実務経験などの要件を満たすと、「電気管理技術者」として事業場の保安管理業務を受託できます(委託契約ごとに産業保安監督部の承認が必要)。対象は電圧7,000V以下で受電する需要設備などに限られ、特別高圧の事業場は対象外です。
免状の種類で変わるのは、受託に必要な実務経験の年数です。
| 免状の種類 | 必要な従事期間 |
|---|---|
| 第一種電気主任技術者 | 3年 |
| 第二種電気主任技術者 | 4年 |
| 第三種電気主任技術者 | 5年 |
「自家用電気工作物の保安管理業務に関する講習」を修了した場合は免状の種類にかかわらず3年、設備容量300kVA以下などの電気工作物を受託する場合はさらに1年減じられます(令和6年6月1日施行)。 出典:平成15年経済産業省告示第249号/中部近畿産業保安監督部近畿支部「保安管理業務に従事したい方」
受託できる件数の上限や報酬は、設備の規模・地域・契約先によって変わります。独立を考える段階で、保安法人や既に独立している方の条件を確かめてください。
キャリアパス例
パターンA:電力会社プロパー → 中核ポジション
- 20代:発電所運転員として現場経験を積む
- 30代:電験二種取得後に主任技術者補佐
- 40代:電験一種取得・基幹発電所の主任技術者
- 50代:給電所運用責任者・幹部候補
パターンB:工場プロパー → 独立開業
- 20-30代:大規模工場の電気主任技術者補佐
- 30-40代:電験一種取得・チーフエンジニア
- 40代後半:保安法人へ転職・独立準備
- 50代以降:電気管理技術者として独立(受託できるのは7,000V以下で受電する需要設備などの保安管理)
年齢や経験年数による給与の違いは、上の「国の統計で見る給与」の経験年数別の表を参考にしてください。
よくある質問
Q. 電験一種だけで就職・転職できますか?
電験一種は、すべての事業用電気工作物の電気主任技術者として選任を受けられる資格です。発電所や大規模な工場などの求人で活かせますが、採用では実務経験もあわせて見られることが多いため、応募先の求人票で条件を確かめましょう。
Q. 電験一種の想定年収はいくらですか?
資格ごとの年収の公的な統計はありません。この資格の仕事が数えられる職種の値では、「電気・電子・電気通信技術者(通信ネットワーク技術者を除く)」の推定年収は704万円(企業規模1,000人以上で750万円、10〜99人で598万円)です(厚生労働省「賃金構造基本統計調査」令和7年をもとに、毎月の給与×12+年間賞与で当サイトが計算。資格を持っていない人も含む職種全体の値です)。年収は勤務先の業種や規模、担当する設備、実務経験によっても変わります。
Q. 二次試験に合格しないと役立たないですか?
一次試験の合格は学習の到達度を示すものとして履歴書に書けますが、電気主任技術者の免状を受けるには二次試験の合格が必要です。一次合格後は同じ年度と翌年度の2回、二次試験を受けられるので、最終合格を目指して計画を立てましょう。
Q. 電験一種は独立開業できますか?
電気主任技術者の免状を受け、告示で定める実務経験(第一種は3年、第二種は4年、第三種は5年。講習を修了した場合は一律3年)などの要件を満たすと、電気管理技術者として事業場の保安管理業務を受託できます(委託契約ごとに産業保安監督部の承認が必要)。対象は電圧7,000V以下で受電する需要設備などに限られます。
Q. 電験二種からどれくらいキャリアが伸びますか?
電験二種は電圧17万V未満、電験一種はすべての事業用電気工作物の保安監督ができます。電験一種を取ると、より大きな発電所や特別高圧の設備などへ担当できる範囲が広がります。
関連資格との組み合わせで価値倍増
- ビル管理士(建築物環境衛生管理技術者):超大型ビル・データセンタ管理者として鬼に金棒
- エネルギー管理士:省エネ法対応で大規模事業所の幹部候補に
- 高圧ガス製造保安責任者(甲種化学・機械):化学コンビナート・水素ステーション運営と相性のよい組合せ(当サイトでは未収録)
- 1級電気工事施工管理技士:施工管理+保安管理のスーパー人材へ
関連記事
まとめ
電験一種は電圧無制限で全ての事業用電気工作物を担える最上位国家資格で、電験二種では担当できない超大型の設備まで任せられる点が最大の強みです。給与は勤務先の規模で大きく変わるため、上の「国の統計で見る給与」と応募先の求人票を見比べてください。再エネ大量導入・系統連系・需給調整市場の進展で、今後も希少性が落ちにくい資格です。
第一種電気主任技術者(一次) 一問一答 →