数検1級「線形代数(行列・行列式・固有値)」の出題ポイント
数検1級(実用数学技能検定1級)は大学程度の数学が対象の最難関級で、「線形代数」はその中核です。行列の積・行列式・逆行列・階数(ランク)・固有値固有ベクトル・対角化・ケイリーハミルトンの定理まで幅広く問われます。本章は一問一答化できる1次計算技能の典型に絞った解説で、記述式の2次や高度な抽象論は教科書併用が必須です。
※出題範囲・基準は改定される場合があります。最新情報は必ず日本数学検定協会 公式情報でご確認ください。
行列の積
行列の積は「左の行 × 右の列」の内積で各成分を計算します。順序を入れ替えると一般に値が変わる(非可換)点に注意します。
- 定義:A=[[a,b],[c,d]]、B=[[p,q],[r,s]] のとき AB=[[ap+br, aq+bs],[cp+dr, cq+ds]]。
- 計算例:A=[[1,2],[3,4]]、B=[[5,6],[7,8]] のとき AB=[[1·5+2·7, 1·6+2·8],[3·5+4·7, 3·6+4·8]]=[[19,22],[43,50]]。
- BA=[[5·1+6·3, 5·2+6·4],[7·1+8·3, 7·2+8·4]]=[[23,34],[31,46]] となり AB≠BA。
行列式(サラスの方法・余因子展開)
正方行列に対し定まるスカラー値が行列式 |A| です。逆行列の存在判定(|A|≠0 なら正則)に使います。
- 2次:|[[a,b],[c,d]]| = ad - bc。例:|[[1,2],[3,4]]| = 1·4 - 2·3 = -2。
- 3次(サラスの方法):|[[a,b,c],[d,e,f],[g,h,i]]| = aei + bfg + cdh - ceg - bdi - afh。
- 計算例:|[[1,2,3],[4,5,6],[7,8,10]]| = 1·5·10 + 2·6·7 + 3·4·8 − 3·5·7 − 2·4·10 − 1·6·8 = 50 + 84 + 96 − 105 − 80 − 48 = -3。
- 余因子展開:第1行で展開すると = 1·(5·10−6·8) − 2·(4·10−6·7) + 3·(4·8−5·7) = 1·2 − 2·(−2) + 3·(−3) = 2 + 4 − 9 = -3(サラスと一致)。
逆行列
- 2次の公式:A=[[a,b],[c,d]]、ad−bc≠0 のとき A^(-1) = (1/(ad−bc))·[[d,−b],[−c,a]]。
- 計算例:A=[[1,2],[3,4]] は ad−bc=−2 なので A^(-1) = (1/(−2))·[[4,−2],[−3,1]] = [[−2,1],[3/2,−1/2]]。
- 検算:A·A^(-1)=[[1·(−2)+2·(3/2), 1·1+2·(−1/2)],[3·(−2)+4·(3/2), 3·1+4·(−1/2)]]=[[1,0],[0,1]]=単位行列。正しい。
階数(ランク)
- 定義:行基本変形で階段行列に直したときの、0でない行の本数が階数 rank A。
- 計算例:[[1,2,3],[2,4,6],[1,1,1]] は第2行が第1行の2倍なので、行変形すると有効な独立行は2本。よって rank = 2。
- 連立1次方程式の解の存在・自由度の判定に直結します。
固有値・固有ベクトル
Ax = λx(x≠0)を満たす λ が固有値、x が固有ベクトルです。特性方程式 det(A − λE) = 0 を解いて求めます。
- 計算例:A=[[2,1],[1,2]] の特性方程式は |[[2−λ,1],[1,2−λ]]| = (2−λ)^2 − 1 = 0。
- 展開すると λ^2 − 4λ + 3 = 0、(λ−1)(λ−3)=0 より 固有値 λ=1, 3。
- λ=3 のとき (A−3E)x=[[−1,1],[1,−1]]x=0 → x=(1,1) 方向。λ=1 のとき (A−E)x=[[1,1],[1,1]]x=0 → x=(1,−1) 方向。
対角化とケイリーハミルトンの定理
- 対角化:固有ベクトルを並べた行列 P を用いて P^(-1)AP = diag(λ_1, λ_2, …)(対角行列)にできます。A^n の計算が容易になります。
- 上の例では P=[[1,1],[1,−1]] とすると P^(-1)AP = [[3,0],[0,1]]。
- ケイリーハミルトンの定理:行列 A は自身の特性方程式を満たす。2次なら A^2 − (trA)A + (detA)E = 0。例 A=[[2,1],[1,2]] は trA=4、detA=3 なので A^2 − 4A + 3E = 0。これを使うと A^2 = 4A − 3E と次数下げができます。
用語の確認は用語集、学習の進め方は勉強法ガイドを参考に。線形代数が固まったら次は微分法(偏微分・多変数)の章へ進みましょう。
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