労働安全衛生コンプリートガイド|衛生管理者1種・2種・潜水士

企業の事業場における安全衛生管理は労働安全衛生法で厳格に定められており、常時使用する労働者が50人以上の事業場では衛生管理者の選任が義務付けられています。本ガイドでは、第一種衛生管理者・第二種衛生管理者・潜水士という「労働安全衛生法に基づく国家資格」3つを徹底比較し、総務人事キャリア/工場・化学業界/海洋・インフラ系といった業態別の最適ルートを解説します。資格手当・選任義務クリア・転職市場価値の3軸で網羅した、労働安全衛生分野の決定版ガイドです。

※受験料・合格率・試験日程は2026年時点の目安です。最新情報は試験実施団体(公益財団法人 安全衛生技術試験協会)の公式情報でご確認ください。

労働安全衛生関連資格の全体像

企業の事業場運営に関わる「労働安全衛生法に基づく国家資格」は、大きく以下の3系統に整理できます(衛生工学衛生管理者は衛生管理者の上位区分)。

3資格 徹底比較表(受験資格・合格率・難易度)

🎓 マークと資格名のリンクから、当サイトで無料の一問一答演習に挑戦できます。

資格 受験資格 合格率 受験料 試験日程 学習時間目安 独占/必置業務
🎓 衛生管理者(第一種) 大学・短大・高専卒+1年実務/高卒+3年/10年以上実務 等 約45〜50% 8,800円 通年(月1〜2回・地域差あり) 100h 全業種の50人以上事業場で選任可
🎓 第二種衛生管理者 大学・短大・高専卒+1年実務/高卒+3年/10年以上実務 等(1種と共通) 約55〜60% 8,800円 通年(月1〜2回・地域差あり) 80h 有害業務を含まない業種限定(小売・金融・IT等)
🎓 潜水士 受験資格なし(学歴・実務経験不問) 約74%(令和7年度74.4%) 8,800円 年3回程度(地域により2/5/8/11月等) 40〜60h 潜水業務従事に必須

取得順序のおすすめ 3パターン

キャリア志向・業態別に最適な取得ルートを3パターンで整理しました。

パターン1総務人事キャリアルート(ステップアップ型)

対象:人事総務・労務・安全衛生担当のキャリアを志向する方/中小企業の総務マネージャー候補

順序:第二種衛生管理者(80h・3〜4ヶ月)→ 第一種衛生管理者(追加50h・2〜3ヶ月)

メリット:労働生理が共通範囲のため学習効率◎・難易度の低い2種で合格体験を作ってから1種にステップアップできる・有害業務の有無を問わず全業種で活用可能

業種が定まっていない総務人事キャリアでは、まず合格率の高い2種で基礎を固め、続けて1種にステップアップするのが王道。労働生理(人体機能・疾病・健康管理)の科目が共通なので、続けて受験すれば実質学習時間は1種単独受験の半分以下に圧縮できます。

パターン2工場・化学・医療業界ルート(1種一発)

対象:製造業・化学工場・医療機関・建設業・運送業・清掃業など「有害業務を含む業種」の人事総務・安全衛生担当者

順序:第一種衛生管理者を直接受験(100h・3〜4ヶ月)

メリット:有害業務を含む業種では2種では選任義務を満たせないため、最初から1種を取得するのが最短ルート・将来「衛生工学衛生管理者」への発展も視野

製造業・医療・危険物・化学物質を扱う業種では、2種では選任義務を法的にクリアできないため、最初から第一種衛生管理者を狙うのが必須。労働衛生(有害業務)・関係法令(有害業務)の知識は実務でも直接活用できるため、学習投資の費用対効果が高い選択です。

パターン3専門分野特化ルート(潜水士)

対象:海洋土木・橋梁建設・水中点検・サルベージ業界

順序:潜水士を単独取得(衛生管理者とは独立して取れる)

潜水士:40〜60h・合格率7割台(令和7年度74.4%)で取得しやすい・潜水業務従事に必須の国家資格で求人ニーズが安定

潜水業務に就くには潜水士免許が前提になるため、業界が決まっているなら最短ルートです。試験負担が軽い割に独占業務が明確で、港湾工事・橋梁点検・サルベージなど求人ニーズが安定しているのが特徴です。

衛生管理者の選任義務(事業場規模別)

労働安全衛生法では、常時使用する労働者数に応じて衛生管理者の選任人数が明確に定められています。違反すると50万円以下の罰金等の罰則対象となるため、人事総務担当者は事業場規模を見据えて早めに資格取得が推奨されます。

事業場規模(常時使用する労働者数) 必要な選任 備考
10〜49人 衛生推進者 1人(資格不要・指定講習修了) 衛生管理者免許は不要
50〜200人 衛生管理者 1人 業種により1種/2種使い分け
201〜500人 衛生管理者 2人 うち1人は専任が必要な場合あり
501〜1000人 衛生管理者 3人 うち1人は専任衛生管理者
1001〜2000人 衛生管理者 4人 うち1人は専任衛生管理者
2001〜3000人 衛生管理者 5人 うち1人は専任衛生管理者
3001人以上 衛生管理者 6人以上 うち1人は専任衛生管理者

1種/2種の業種別使い分け

試験範囲比較表(1種 vs 2種)

第一種と第二種では出題範囲・問題数が以下のように異なります。共通範囲の「労働生理」は1種2種ステップアップ受験で大きな学習効率向上が見込めます。

科目 第一種衛生管理者 第二種衛生管理者 共通範囲
関係法令(有害業務) 10問 なし ×
関係法令(有害業務以外) 7問 10問 ○(一部)
労働衛生(有害業務) 10問 なし ×
労働衛生(有害業務以外) 7問 10問 ○(一部)
労働生理 10問 10問 ◎(完全共通)
合計 44問 30問 —

合格基準は両試験とも各科目40%以上かつ合計60%以上です。労働生理が完全共通なので、2種合格後に1種を受ける場合は「有害業務を含む関係法令・労働衛生」のみ追加学習すればよく、実質的な追加負担は50時間程度に収まります。

科目免除制度

2種→1種ステップアップでは正式な科目免除制度はありませんが、学習範囲の重複(労働生理10問+関係法令・労働衛生の一般部分)により実質的な学習効率は2倍以上になります。

実務での活用シーン(業態×資格マトリクス)

業種・職種別に最適な資格選択を整理しました。事業場選任義務と独占業務の両面で活用シーンが分かれます。

業態 推奨資格 活用シーン
製造業・化学・医療・建設・運送・清掃 第一種衛生管理者(必須) 50人以上事業場の選任義務クリア・有害業務管理・職場巡視・健康診断管理
IT・金融・保険・小売・卸売・サービス 第二種衛生管理者でOK 50人以上事業場の選任義務クリア・メンタルヘルス・労働時間管理・健康診断
海洋土木・橋梁建設・水中点検・サルベージ 潜水士(必須) 潜水業務従事の前提資格・港湾工事・水中検査・救難作業
大企業の本社人事・労務 第一種衛生管理者+社労士 多事業場の安全衛生統括・労務コンプライアンス・健康経営推進

取得後のキャリア・年収アップ効果

各資格の資格手当・年収相場・キャリア効果を整理しました。

潜水士の単価を国の統計で見ると:

資格ごとの年収の公的な統計はありません。国の公共工事の積算に使う単価では、公共工事設計労務単価(潜水士・1日8時間あたり)は41,500円(京都府)〜65,700円(宮城県)です(国土交通省「令和8年3月から適用する公共工事設計労務単価」(令和8年2月17日公表)・令和8年3月適用)。

資格手当の全国の状況

資格手当の有無や金額は会社ごとに決まり、資格ごとの公的な統計はありません。国の調査では、技能手当・技術(資格)手当を出している企業は全体の48.5%、 支給された人の平均は月21,500円でした(令和6年11月分)。この資格が手当の対象になるか、いくらかは、応募先の求人票や就業規則で確かめてください。

企業規模手当がある企業の割合(※)支給された人の平均(月額)
1,000人以上53.1%20,900円
300〜999人57.5%19,100円
100〜299人56.9%20,500円
30〜99人51.3%25,000円

※何らかの手当を出している企業のうち、技能手当・技術(資格)手当を出している企業の割合。「技能手当・技術(資格)手当」は特定の技能、検査資格などを有する者に対して支給する賃金(調査の定義)。対象は常用労働者30人以上の民営企業。 出典:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」(概況 第17表(支給企業割合)・第18表(支給された労働者1人平均支給額))

学習時間モデル(独学/通信併用)

第一種衛生管理者(社会人・独学)

合計100時間/3〜4ヶ月(1日1時間ペース)

関係法令40h・労働衛生40h・労働生理20h。市販テキスト1冊+過去問演習+当サイト一問一答で対応可。試験は通年実施で受験日を柔軟に選べる。

第二種衛生管理者(社会人・独学)

合計80時間/2.5〜3ヶ月(1日1時間ペース)

関係法令30h・労働衛生30h・労働生理20h。1種より範囲が狭く合格率も高めなので独学合格率は良好。続けて1種を狙う場合は労働生理が共通なので追加50hで1種合格レベルに到達。

潜水士(社会人・独学)

合計40〜60時間/1〜2ヶ月

潜水業務・送気/潜降浮上・高気圧障害・関係法令の4科目。合格率7割台(令和7年度74.4%)で比較的取得しやすい。実務上はダイビング技術・潜水士健康診断が別途必要。

上位・関連資格ロードマップ

労働安全衛生分野でキャリアを深めるなら、以下の関連資格との組み合わせがおすすめです。

よくある質問

Q. 衛生管理者は第一種と第二種、どちらから取るべきですか?

業種で決まります。農林畜水産業・鉱業・建設業・製造業・電気業・ガス業・水道業・熱供給業・運送業・自動車整備業・機械修理業・医療業・清掃業の事業場では、第一種衛生管理者などから選任する必要があります。それ以外の業種では第二種衛生管理者も選任できます。

Q. 第一種と第二種では何が違いますか?

第一種はすべての業種で、第二種は前の質問の業種以外で選任できます。試験は第一種が44問、第二種が30問で、第一種には有害業務に関する関係法令と労働衛生の問題が加わります。労働生理は両方に共通です。

Q. 衛生管理者の選任義務はどの規模の事業場から発生しますか?

常時50人以上の労働者を使用する事業場で選任が必要です。人数は50〜200人で1人、201〜500人で2人、501〜1,000人で3人、1,001〜2,000人で4人と規模に応じて増え、選任すべき事由が生じてから14日以内に選任して労働基準監督署長に報告します。常時10〜49人の事業場では衛生推進者を選任します。

Q. 衛生管理者の受験には実務経験証明書が必要ですか?

はい。受験には学歴に応じた労働衛生の実務経験が必要です(大学・短大・高専卒は1年以上、高校卒は3年以上、学歴を問わない場合は10年以上など)。申請では事業者が証明する実務経験証明書を提出するため、早めに勤務先へ依頼しておきましょう。

Q. 潜水士の資格があれば誰でも潜水作業に従事できますか?

潜水士は高気圧作業安全衛生規則に基づく免許で、事業者は潜水業務に潜水士免許を持つ人を就かせる必要があります。潜水士試験には受験資格がなく、誰でも受験できます。実際の業務では、潜水の技術や高気圧業務健康診断なども求められます。

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