エネルギー管理士「熱利用設備及びその管理」出題ポイント解説
熱分野の課目III「熱利用設備及びその管理」は、ボイラ・工業炉・熱交換器・空調設備・冷凍設備・乾燥設備・コージェネレーション・廃熱回収・保温断熱・計測と、産業現場の熱機器を網羅的に問う章。設備構造の知識と省エネ運用の判断、原単位管理が同時に問われます。
※受験料・試験日程・合格基準・出題範囲は改定される場合があります。最新情報は必ず省エネルギーセンターの公式情報でご確認ください。
1. ボイラの種類と構造
炉筒煙管ボイラ: 中小容量・低中圧用、保有水量大で負荷変動に強い、構造単純。水管ボイラ: 高圧・大容量、自然循環・強制循環・貫流の各方式、発電・大規模工場で主流。貫流ボイラ: 細管に水を一過式で送り蒸発、起動時間短く小型、給水処理が厳格。付属設備として節炭器(エコノマイザ:給水を排ガスで予熱)、空気予熱器(燃焼用空気を排ガスで予熱)を組み合わせ熱効率を高めます。ボイラ効率η=(発生蒸気の保有熱量−給水保有熱量)/燃料発熱量。
2. 工業炉・電気炉
燃料炉: 連続炉(プッシャ式・ローラハース・ウォーキングビーム)、バッチ炉(台車炉・箱型炉)。空気予熱・蓄熱式バーナ(リジェネバーナ:排ガス潜熱を蓄熱体で回収)で高効率化。電気炉: アーク炉(電気鉄鋼)、誘導炉(高周波・低周波)、抵抗炉、間接アーク炉、プラズマ炉。炉壁の蓄熱損失を抑える低熱容量耐火材、扉開閉時の放散損失抑制が省エネポイント。
3. 蒸気輸送とスチームトラップ
蒸気輸送配管は適切な保温・適切な勾配・ドレン抜きが基本。スチームトラップは蒸気を漏らさずドレン(凝縮水)のみ排出する自動弁で、機械式(バケット・フロート)、温度調節式(バイメタル・ベローズ)、熱力学式(ディスク)の3形式。蒸気漏れトラップは省エネの大敵、定期点検と更新が重要。凝縮水回収でボイラ給水温度を高めれば、給水加熱用蒸気を削減できます。
4. 熱交換器(シェル&チューブ・プレート)
シェル&チューブ式(多管円筒形): 高圧・高温・大容量に対応、固定管板・U字管・浮動頭の構造別に熱伸縮処理が異なる。プレート式: 伝熱面積を小型容積に収め高効率、低中圧・清浄流体向け、ガスケット交換で増設容易。空冷式(フィンチューブ): 冷却水不要、化学プラント等で広く利用。汚れ係数(ファウリングファクタ)の悪化が伝熱を低下させるため、定期洗浄が必要。
5. 空調設備と湿り空気線図
空調方式: 中央熱源式(FCU方式・空冷PAC方式・水冷チラー方式)、個別分散式(ビル用マルチエアコン)。熱源機: 吸収冷凍機(蒸気・温水・直焚き、臭化リチウム水溶液+水冷媒、COPは電動式より低いが廃熱・ガス利用に有利)/遠心冷凍機(ターボ)(大容量・高効率、可変速インバータ駆動が省エネ)/ヒートポンプ(暖房COP=COP_cooling+1)。湿り空気線図で乾球温度・湿球温度・絶対湿度・相対湿度・エンタルピー・露点を読み、加熱・冷却・加湿・除湿の状態変化を把握。外気冷房・全熱交換器は中間期・冬期換気の省エネ手段。
6. 冷凍設備とモリエ線図(COP)
冷凍サイクル: 圧縮機→凝縮器→膨張弁→蒸発器の4工程。モリエ線図(p-h線図)で各点のエンタルピーを読み、冷凍効果=h1−h4、圧縮仕事=h2−h1、COP=冷凍効果/圧縮仕事=(h1−h4)/(h2−h1)。冷媒はHFC(R32、R410A、R134a)、自然冷媒(CO2・アンモニア・HC)へ移行、地球温暖化係数GWPの低い冷媒選定がトレンド。圧縮機形式: 往復式・スクロール・スクリュー・ターボ。蒸発温度を上げ・凝縮温度を下げるとCOP向上、冷却塔の冷却水温度管理が要。
7. 乾燥設備・コージェネレーション・廃熱回収
乾燥: 対流伝熱式(熱風)・伝導伝熱式(接触加熱)・放射式(赤外線)・誘電/マイクロ波式。恒率乾燥期間→減率乾燥期間の二段階、湿球温度近傍で進行する恒率期間が省エネ余地大。コージェネレーション(CGS): ガスエンジン(電気/熱比1〜1.3、起動応答速い)/ガスタービン(電気/熱比0.5〜0.8、排熱が高温で蒸気回収に有利)/燃料電池(PAFC・SOFC、高効率・低騒音)。総合効率70〜85%。廃熱回収: 排ガス・蒸気ドレン・冷却水の保有熱を熱交換器・廃熱ボイラ・吸収冷凍機等で再利用。
8. 保温・断熱
配管・機器表面の放散損失低減が省エネの基本。保温材: ロックウール、グラスウール、ケイ酸カルシウム、パーライト、ポリスチレンフォーム等。使用温度と熱伝導率λ[W/(m·K)]の許容範囲を選定。経済保温厚: 保温費用と熱損失費用の合計が最小となる厚みを採用。外面熱伝達(自然対流・放射・強制対流)を踏まえ、円筒保温の放散熱量Q=2πL(T_i−T_o)/[(1/λ_ins)ln(r_o/r_i)+1/(α_o・r_o)] を計算。フランジ・弁の脱着可能保温カバー(バルブジャケット)も導入が進んでいます。
9. 計測機器とSEC原単位管理
温度計測: 熱電対(K型・T型・R型)、測温抵抗体(Pt100)、放射温度計、サーモグラフィ。流量計: オリフィス・ノズル・ベンチュリ(差圧式)、電磁流量計(導電性液体)、超音波流量計、コリオリ式、渦式。圧力計: ブルドン管、ダイヤフラム、半導体センサ。排ガス分析: O2計(ジルコニア式・磁気式)、CO計、NOx計。これら計測値からSEC(Specific Energy Consumption: 製品量あたりエネルギー消費量)等の原単位を算出し、目標値との比較で改善余地を把握するエネルギー原単位管理が省エネ法判断基準の根幹です。
覚え方のコツ
設備課目は「設備の構造図+運用ポイント+計算式」を三点セットで整理。ボイラなら「炉筒煙管/水管/貫流」の特徴と効率式、空調なら「FCU/PAC/吸収冷凍機/遠心冷凍機」の方式比較、冷凍ならモリエ線図でのCOP計算、コージェネなら「ガスエンジン/ガスタービン/燃料電池」の電気/熱比比較。湿り空気線図と冷凍モリエ線図は実問題で必ず点を読む練習を10セット以上やると点の位置感覚が身につきます。SEC原単位は「使用量÷生産量」のシンプルな比だが、対象範囲(電気・燃料・蒸気を合算するか)の定義を本文で確認するクセを。
よくあるひっかけ
熱利用のひっかけ。①ボイラ効率の定義: 出口蒸気の保有熱量−給水熱量を燃料発熱量で割る、給水熱量を含めない誤算式。②節炭器と空気予熱器: 節炭器=給水加熱、空気予熱器=燃焼用空気加熱、両者を逆にする選択肢。③スチームトラップの3形式: 機械式(密度差)/温度調節式(温度差)/熱力学式(流体力学)、原理を取り違える。④吸収冷凍機の冷媒・吸収液: 冷媒=水、吸収液=臭化リチウム水溶液(LiBr)、逆にする誤答。⑤湿り空気の絶対湿度と相対湿度: 絶対湿度=乾き空気1kgあたりの水蒸気質量、相対湿度=飽和水蒸気圧に対する比、両者の単位(kg/kg' vs %)の混同。⑥COP=冷凍効果/圧縮仕事: ヒートポンプ暖房COP=凝縮放熱/圧縮仕事=冷房COP+1、両者を同値とする誤り。⑦コージェネ総合効率: 電気+熱の有効利用合計を燃料発熱量で割る、電気のみで評価する誤算。⑧経済保温厚: 保温費用と熱損失費用の合計が最小、熱損失だけ最小化する誤答。⑨熱電対の補償導線: 端子温度の影響を補正する専用導線、銅線で代用すると測定誤差が増大。⑩SEC原単位: エネルギー使用量を生産量・面積等で除した比、絶対量で評価する誤り。⑪リジェネバーナと再循環バーナ: リジェネ=蓄熱体で排ガス熱回収、再循環=排ガスを燃焼空気側に戻しNOx低減、目的が異なる。
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